研究室何処へ
研究室の日々,大学の日々を綴ります
学生をダメにするもの
 大学の場合、教職課程を経なくても教員になることが可能です。極度に学問的に細分化された専門的事項を講義ないし実験により指導することになるため、中高の指導要領のようなものを作ることができません。教員が最も望ましいと考える教科書や資料、論文などを利用して、専門教育を展開します。
 このとき、教育のよりどころとなるものは、自分がどうやってその専門的分野の各事項を理解してきたか、ということであろうかと思います。そして、教育スタイルや手法は、それがよいか悪いかは別として、自分が受けてきた教育を踏襲することが多いと思います。FDについて考える機会もありますが、大学全体としては教員の考え方、バックグラウンドが専門分野によって千差万別であることから、共通的な取り組みが難しい点も多々あるように感じます。
 最近、従来は座学で指導していたトピックを、面白い実験で代替して理解させようという取り組みが行われることが増えてきました。わかりやすくて面白い実験を設計し、授業として取り入れるのです。これは一見、よいように見えるのですが、もともと教育で実現すべき指導事項の理解という狙いが損なわれ、座学で行うのと比較して遊びの要素が強すぎてしまい、ただ単に遊んでいるだけに過ぎなくなってしまっているケースも少なくありません。それでも、学生が喜ぶので、それを続けてしまう、ということになります。学生が喜べばそれでよいのか、という点には、あまり意識が及んでいません。
 教員には、ある専門的トピックを理解させることについて責任を持つべきであると思います。学生が楽しく遊べる実験を行うことで本質的な問題理解を避けて通ってしまい、学生をかえってダメにしているのではないのだろうか、と危惧することがあります。単に、楽しい実験をやれば、その場が楽しければそれでいい、というものではなく、学生をダメにする教育、そうでない教育というものについて、もっと議論が必要と思います。教育の品質というものに対する責任について、考えるべきであろうと思います。

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夏休み前
 前期の講義や演習も一段落しつつあるこの時期になると、学生対応や会議、事務処理で目まぐるしく過ぎる1日の終わりに、何か考える余裕もでてきます。
 これから後期開始までの期間にやらねばならない仕事の計画、夏休みのプライベート旅行のプラン、もう少し長期的な計画の立案など、いろいろです。

 大学教員という立場は、自分自身が管理職でもあり部下でもあるという状態なので、自己管理ができていることが前提ですが、なかにはできていない人もいます。往々にして、自己管理ができない人は、研究もうまくいっていないように見えます。逆に、自己管理そのものに関心があり、自分を管理することが趣味であるかのような教員もいます。
 一般企業ではどちらかというと、社員に対して特定の企業理念や企業文化を浸透させることに心血が注がれがちですが、大学という場所はこうしたポリシーが形成されにくい環境にあります。つまり、多様な考えを持った人材がそのまま、多様性を保った状態で生息することができてしまう空間だといえます。しばしば大学人は社会性がない、などと言われますが、これだけ多様な人材が共生する社会的空間で、それなりにコミュニケーションをとって相互に共通的な問題を調整していこうとすれば、社会性はなくてはならないものといえます。この点でいえば、必ずしも、「大学生は社会性に欠ける」というロジックは当てはまらないように感じます。民間企業と比較すると、その問題解決は奔放なスタイルによっていますが、組織の懐の深さを感じられる部分もあります。
 大学人がもっと社会との接点を持って学外へと出て行くようになれば、おそらく、社会での大学人に対する見方もだんだんかわっていくと思います。
 


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教員公募選考(続き)
教員公募選考についての続きです。

公募のことを書こうと思ったきっかけは、公募に落ち続けている、ある友人の研究者の公募書類を見せてもらったことがきっかけでした。その公募書類を見て、anywhereには公募に落ち続ける理由が推測できました。公募書類に記載している専門分野を表現する「語彙」が悪いのです。

 本人はニッチな専門分野を表現するために特殊な分野名を示す語彙を使用して、専門性の高さを表現することを意図しました。しかし、大学はそのような特殊分野を専門とする人を必ずしも必要としているわけではありません。むしろ、大学は、着任時にその人物が担当予定科目を適切に指導できるか、という観点から専門分野を評価します。そして、その専門分野を持つ人がこの大学組織に必要か、ということを考えます。この時、あまりにもニッチな分野名が記載されていると、担当予定科目について標準的な講義トピックを取り扱えないのではないか、との誤解を招きがちです。そして多くの教員は、そんなニッチな分野だけカバーされても仕方ない、と考えます。あくまでも、公募に応募する書類では、「この科目であれば、この分野名が相応しい」と想定される専門分野名を公募書類に書かねばなりません。
 最近、大学でも若手のポストは任期付であることが多いので、今後、公募書類の書き方やノウハウを、大学が組織的に支援するといった取り組みが必要となるでしょう。マーケティング、という言葉が頭に浮かんでしまうようでは行きすぎかもしれませんが、おそらく、研究者が自分をアピールする際の方法を教える組織が必要なのだと思います。

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